MOEフォーラム2025開催のご案内

(対面形式)

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​​​平素より、統合計算化学システム MOE およびタンパク質立体構造データベースシステム PSILO をご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、MOE・PSILO に関心をお持ちの研究者の皆様を対象とした年次イベント「MOEフォーラム 2025」を、9月12日(金)に開催いたします。本年のフォーラムは、6年ぶりに対面形式での開催となります。また、遠方の方もご参加いただけるよう、セッションのオンライン配信も行います。

 会場では、講演や製品デモに加え、参加者同士の交流を深めていただけるネットワーキングイベント(情報交換会)もフォーラム終了後に実施いたします。 

当日は、以下のプログラムを予定しています:

  • 国内外のユーザー7名による研究発表(同時通訳付き)
  • Chemical Computing Group 社スタッフによる開発動向の紹介
  • 当社スタッフによる MOE と PSILO の製品デモンストレーション
  • 参加者による研究事例のポスター掲示
  • 参加者同士の情報交換を目的としたネットワーキングイベント(会場参加者対象)

さらに、前日9月11日(木)には、MOE の基本操作から応用までを学べるトレーニングセッション「MOEワークショップ」を開催します。 午前は低分子設計、午後は抗体・ペプチド設計をテーマに、実習形式で進行します。

MOE・PSILOユーザーの方はもちろん、これらのツールに関心をお持ちの研究者の皆様のご参加を歓迎いたします。 皆様のご来場・ご参加を、スタッフ一同心よりお待ちしております。

MOEとPSILOに関する詳細は、弊社Chemical Computing Group社のウェブサイトも併せてご覧ください。

ご注意事項:

  • 同時通訳音声をご希望の方は、スマートフォンまたはタブレット端末、およびイヤホンをご持参ください。必要に応じて充電器もご準備ください。各テーブルに電源をご用意しています。
  • WiFi接続サービスをご利用いただけます。
  • ワークショップにご参加の方は、USBメモリーが利用可能なノートPCをご持参ください。
  • 同業他社の方のご参加はお断りしております。

MOEを用いた研究成果のポスターを募集します。他の学会等で発表された内容でも構いません。ポスター発表をしていただける方は、参加登録フォームにタイトルの入力をお願いします。

開催概要

イベント 日時 場所 参加費
MOEワークショップ 2025年9月11日(木)10:00 - 17:00 日本橋ライフサイエンスビルディング LSB-302会議室 無料
MOEフォーラム2025 2025年9月12日(金)10:00 - 17:00 TKP fabbit会議室丸ノ内 無料
ネットワーキング(情報交換会) 2025年9月12日(金)17:00 - 18:30 TKP fabbit会議室丸ノ内 無料

プログラム

9月11日 MOEワークショップ

時間 タイトル
10:00-13:00 前半:基礎編(MOEの基本操作と低分子設計)
内容
14:00-17:00 後半:応用編(抗体/ペプチド設計)
内容

9月12日 MOEフォーラム2025 + ネットワーキング(情報交換会)

時間 タイトル 講演者
10:00-10:10 開会のごあいさつ
10:10-11:00 MOEとPSILO 紹介&デモ 株式会社モルシス
神谷 謙太朗
11:00-11:30 3D-RISMを活用したドラッグデザイン 田辺三菱製薬株式会社
村崎 広太
要旨
11:30-12:00 Beyond Molecular Dynamics: Efficient Conformational Sampling in Nucleic Acids Using LowModeMD Chemical Computing Group
Alain Ajamian
要旨
12:00-13:00 ご昼食(お弁当)
13:00-13:30 肝線維症の進行を抑制できるTcf21アゴニストのin silico探索 東海大学医学部
平山 令明
要旨
13:30-14:00 分子モデリング計算MOEを活用した種々の阻害剤の創薬研究 東京科学大学
小早川 拓也
要旨
14:00-14:30 MOEを活用した抗体開発可能性予測のための機械学習ツール 第一三共株式会社
米田 耕三
要旨
14:30-15:00 Comparative Analysis of Small Molecule Conformational Search Methods in Drug Discovery: Balancing Speed, Accuracy, and Interpretability Insilico Medicine
Jinxin Liu
要旨
15:00-15:20 休憩
15:20-15:50 FMO計算の効率的な入力生成・解析支援ツールFMOeの開発とその活用事例 理化学研究所
神坂 紀久子
要旨
15:50-16:20 MOEを活用した多様なモダリティに対する創薬研究の加速 アステラス製薬株式会社
長岡 和也
要旨(TBA)
16:20-16:50 MOE and PSILO Next Release Overview Chemical Computing Group
Alain Deschenes
16:50-17:00 閉会のあいさつ
17:00-18:30 ネットワーキング(立食形式の情報交換会/MOEとPSILOのデモンストレーション/ポスター掲示)

前半:基礎編(MOEの基本操作と低分子設計)

株式会社モルシス

MOEの概要を説明した後に分子の選択や表示の変更などの基本的な操作を行います。その後、キナーゼと阻害剤の複合体を題材として、活性部位の可視化/特徴付け、リガンド-受容体間の相互作用解析の情報を基に既存のリガンドを改変する方法を学習します。また、ドッキングシミュレーションや母核置換などのリガンド設計において重要な機能についても学習します。

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後半:応用編(抗体/ペプチド設計)

株式会社モルシス

抗体やペプチド設計に関するMOEの機能を具体的な分子系を扱いながら学習します。抗体設計においては、CDRやフレームワークなどのアノテーション付け、相互作用解析、表面パッチ解析、物性推算などを行い、それらで得られた知見を基に、タンパク質工学の機能により、物性や抗原との親和性が良好な抗体への改変を行います。ペプチド設計においては、ペプチド-タンパク質間相互作用解析とペプチド構造の対話的な最適化の方法について学習します。また、タンパク質の溶解度予測モデルの構築やバイオ医薬品設計支援アドオンプログラムのBio-MOEなどの発展的な内容も学習します。

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3D-RISMを活用したドラッグデザイン

村崎 広太(田辺三菱製薬株式会社)

3D-RISM(Three-Dimensional Reference Interaction Site Model)は、溶媒分子の三次元分布を統計力学的に評価する手法であり、高速かつ正確に溶媒和効果を解析できる点が特徴です。MOEではGUIで簡便に3D-RISM計算が実施可能です。本講演では、田辺三菱製薬で得られたX線結晶構造解析およびCryo-電子顕微鏡解析データに3D-RISMを適用した例を紹介します。また、PROTAC®三者複合体を3D-RISMで解析し得られた知見を紹介します。

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Beyond Molecular Dynamics: Efficient Conformational Sampling in Nucleic Acids Using LowModeMD

Alain Ajamian (Chemical Computing Group)

Modeling nucleic acids, particularly RNA, presents challenges due to their dynamic nature, with biologically relevant conformations often differing significantly between unbound and bound states. This variability complicates predictions in silico, making efficient conformational sampling crucial. In this presentation, we investigate the efficacy of the LowModeMD method for enhancing conformational sampling in DNA and RNA systems compared to traditional molecular dynamics approaches.By focusing on low-frequency vibrational modes, LowModeMD enables rapid exploration of conformational space, facilitating the identification of biologically relevant structures. We demonstrate the utility of LowModeMD in analyzing bulged residues, sampling terminal and internal loops, cryptic pockets and large conformational changes caused by complexation.

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肝線維症の進行を抑制できるTcf21アゴニストのin silico探索

平山 令明 (東海大学 医学部)

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)により起こる肝線維化は、肝関連の死亡率に最も寄与する因子と考えられている。 しかし、直接的に線維化を抑制できる医薬分子は現在のところ全くない。肝線維症は、肝星細胞(HSC(hepatic stellate cell))が 炎症により活性化して、コラーゲンをはじめとする線維成分を過剰に産生することにより発症する。 最近、転写因子Tcf21が肝星細胞の活性化を抑制できることが発見された。そこで我々はTcf21アゴニストとして作用できる低分子化合物の探索を開始した。

Tcf21は共役転写因子(例えばTcf3)と共に線維成分の生成をコードするDNA部分と結合することで、その抑制効果を発揮する。 これらの分子間相互作用の様式をまず知るために、Tcf21/Tcf3/DNA三元複合体の立体構造をホモロジー・モデリング法で構築した。 続いて、この立体構造に基づきTcf3/DNA複合体と相互作用するTcf21上のアミノ酸領域から相互作用に直接関与する複数の ファーマコフォア(Ph4)を特定し、それらに対応する構造を分子内に有する化合物を約770万種の市販低分子化合物の中から探索した。 最終的に、Ph4で選択された化合物のTcf3/DNA複合体への親和性をドッキング計算で評価して、アゴニスト候補を絞った。全ての計算は統合計算化学システムMOEで行った。

活性化されたHSCでは、線維成分が過剰に産生されるが、その内の1つにα-平滑筋アクチン(Acta2)がある。 Tcf3/DNA複合体への親和性が高く予測された化合物のActa2発現量を実験で評価した結果、有意にActa2の発現を抑制し、 かつ細胞毒性が低い化合物が見出された。現在臨床試験に向かった研究を継続中である。

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分子モデリング計算MOEを活用した種々の阻害剤の創薬研究

小早川 拓也 (東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所)

ウイルス感染症は人類にとって重大な脅威であり、COVID-19パンデミックはその深刻さを改めて認識させた。 HIV感染症やB型肝炎等の慢性ウイルス感染症に対しては、完治を目指した新規作用機序を有する治療薬の開発が急務である。 我々の研究室では、分子モデリング計算ソフトウェアMolecular Operating Environment (MOE) を活用し、 標的タンパク質の構造情報に基づいた合理的創薬研究を展開している。

本研究では、MOEを用いたin silicoスクリーニングにより、HIV-1カプシドタンパク質およびHBVカプシドタンパク質を 標的とする新規阻害剤の探索を行った。まず、Protein Data Bankから取得した標的タンパク質の結晶構造を基盤として、 結合親和性と有機合成化学的な実行可能性を踏まえて候補化合物を選定した。その結果、HIV-1カプシドタンパク質阻害剤として MKN-1およびMKN-3を、HBVカプシド阻害剤としてCpd4およびTKB-HBV-CA-001を見出すことに成功した。

さらに、MOEのドッキングシミュレーションを用いた構造活性相関研究により、これらリード化合物の最適化を行い、既存薬を上回る抗ウイルス活性を示す誘導体の創製に成功した。 特に、CD4ミミックとPEGのハイブリッド分子では、薬物動態の改善も達成された。

本講演では、MOEを活用したウイルスタンパク質阻害剤の探索から最適化に至る一連の創薬研究について、具体的な事例を交えて紹介する。

  1. Kobayakawa, T.; et al. Biomolecules 2021, 11, 208.
  2. Kobayakawa, T.; et al. J. Med. Chem. 2021, 64, 1481-1496.
  3. Kobayakawa, T.; et al. RSC Adv. 2023, 13, 2156-2167.
  4. Kobayakawa, T.; et al. RSC Med. Chem. 2023, 14, 1973-1980.
  5. Kobayakawa, T.; et al. Chem. Pharm. Bull. 2024, 72, 41-47.

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MOEを活用した抗体開発可能性予測のための機械学習ツール

米田 耕三 (第一三共株式会社)

抗体関連モダリティのdevelopability評価は、非特異吸着性、自己相互作用性、疎水性、静電特性、構造安定性など多岐にわたる要素を含み、 ヒト体内で良好な挙動を示し、かつ製造可能性が高い候補を早期に特定するために、バイオ創薬研究において極めて重要なプロセスである。 これにより、創薬スピードの向上やバイオプロセス開発にかかる期間やコストの削減など、多くの利点がもたらされる。

特に、配列情報からdevelopabilityを予測するin-silico解析の取り組みは、抗体技術のプラットフォームの進化と共に飛躍的に成長し、 アカデミアや製薬企業において広く研究が進められている。

近年、我々は複数のdevelopability項目をハイスループットで分析するwet評価系を構築し、 これらのデータを機械学習手法で利活用することで、in-silicoでのdevelopability予測フローを確立した。 機械学習にはMOEなどのソフトウェアから生成されるタンパク質の特徴量を使用している。本発表では、このフローの詳細や精度について報告する。

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Comparative Analysis of Small Molecule Conformational Search Methods in Drug Discovery: Balancing Speed, Accuracy, and Interpretability

Jinxin Liu (Insilico Medicine)

Background: Molecular conformation plays a crucial role in determining the biological activity of small molecules in drug discovery. The accurate prediction of low-energy conformations and energy barriers is essential for understanding structure-activity relationships and optimizing drug candidates. With the rapid development of computational methods, various conformational search tools have emerged, ranging from traditional physics-based approaches to artificial intelligence-driven methods.

Methods: We conducted a comprehensive comparative study of multiple conformational search methodologies, including traditional approaches such as MOE and xtb, as well as AI-based methods like Auto3D. The evaluation focused on three key performance metrics: computational speed, accuracy of conformational prediction, and interpretability of results. Additionally, we assessed the precision of dihedral angle scanning capabilities across different platforms.

Results: Our analysis revealed that MOE demonstrates superior performance in achieving an optimal balance among search speed, accuracy, and interpretability compared to other evaluated methods. While AI-based approaches like Auto3D showed promising speed advantages, they often lacked the interpretability required for mechanistic understanding in drug design. Notably, in dihedral angle scanning applications, MOE's computational accuracy was found to be comparable to the gold-standard combination of xtb with Gaussian calculations.

Conclusions: MOE represents a well-balanced solution for small molecule conformational analysis in drug discovery workflows, offering researchers an optimal compromise between computational efficiency and chemical accuracy. The comparable performance to high-level quantum mechanical methods in dihedral scanning makes it particularly valuable for detailed conformational studies. These findings provide important guidance for selecting appropriate computational tools in structure-based drug design and optimization processes.

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FMO計算の効率的な入力生成・解析支援ツールFMOeの開発とその活用事例

神坂 紀久子 (国⽴研究開発法⼈理化学研究所 生命医科学研究センター)

量子化学計算の一手法であるフラグメント分子軌道(Fragment Molecular Orbital: FMO)法1)は、 タンパク質などの生体高分子系をアミノ酸残基やリガンドなどの小さなフラグメントに分割し、フラグメント モノマーとダイマーによる2体補正近似により分子全体の電子状態を解くことが出来る。加えて、FMO計算によって 得られたフラグメント間相互作用エネルギー(Inter-Fragment Interaction Energy: IFIE)と、 そのエネルギー成分分解(Pair Interaction Energy Decomposition Analysis: PIEDA)2)により、 静電相互作用や水素結合、疎水性相互作用などを定量的かつ精密に評価できるため、分子認識や結合様式の解析に有効である。 FMO計算にはABINIT-MPなどのソフトウェアが用いられ、タンパク質のような標準的な分子については自動フラグメント分割にも 対応している。一方で、共有結合型リガンドや金属錯体、非天然アミノ酸を含む中分子といった複雑な構造に対しては、 従来のツールでは自動フラグメント分割が困難であり、専門的かつ煩雑な手動設定が必要とされてきた。

そこで我々は、FMO計算をより容易に実行・解析できるよう支援する、MOE(Molecular Operating Environment)上で 動作するGUIライブラリ FMOe3)を開発している。 FMOeでは、フラグメントの分割や統合を直感的かつ柔軟に行うことができ、設定した情報に基づいてABINIT-MP向けの 入力ファイルを簡便に作成できる。さらに、IFIEやPIEDA解析も分子の立体構造に合わせて解析することができる。 あわせて我々のグループでは、FMO創薬コンソーシアム(FMO Drug Design Consortium: FMODD)の主導のもと、 FMO法による計算結果を一元的に管理するデータベースFMOED4)を2017年より継続して 開発しており、現在では多くのユーザーに活用されている。今回、FMOeの拡張機能として、FMODBからCPFファイルを 直接ダウンロードして読み込む機能を実装し、IFIE/PIEDA解析結果の可視化をより円滑に行えるようにした。 さらに、原子電荷分布に基づく分子のカラーリング表示やリスト出力機能などの解析支援機能の強化、核酸の自動 フラグメント分割機能などへの対応も行っている。

本講演では、FMOeの機能概要に加え、共有結合型阻害剤や核酸を用いたフラグメント分割と、そのFMO計算結果の解析事例を紹介する。

参考文献:

  1. Kitaura, K. et al., Chem. Phys. Lett., 1999, 313(3-4), 701-706.
  2. Fedorov, D. G. et al., J. Comput. Chem., 2007, 28(1), 222-237.
  3. Moriwaki, H. et al., J. Chem. Inf. Model. 2024, 64 (18), 6927-6937.
  4. Takaya, D. et al., J. Chem. Inf. Model. 2021, 61(2), 777-794.

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